長すぎる問題文と「AI読み」

センター長です。

先日、こんな記事に目が留まりました。

中学受験の「長すぎる問題文」で誤読多発 「傍線部分にジャンプして読む」に専門家が警鐘

 

かなり以前からの傾向で、入試問題での問題量、文章量の上昇は顕著でした。中学、高校、大学、全てのレベルの入試問題において、また、国語のみならず、英語や理科など、全ての教科で当たり前のように問題文が膨らんできています。

それに対し、子どもたちの文章の読み方が崩れてしまうことを危惧しています。上記文章中、以下のような箇所があります。

試験には時間制限があるため、読み切ることができない子は飛ばし読みをしてしまう。長すぎる問題文に対応させるために「傍線部分にジャンプして読め」と指導する家庭教師や塾講師もいる。そうでもしないと、読み終わらない試験があるのも事実だ。

設問の内容によっては、傍線部分にフォーカスして解答を吟味することは有効だし、実際社会に出た時にもよく使われる文章の読み方だと思います。

例えば、病院で手術を受けた際に、それに対して給付金が支払われるのかどうかを調べようと保険約款を読むような場合、何もその約款を隅から隅まで読み切ってから必要情報を見つけ出すようなことはしませんね。目次や索引などから、給付金の支払い要件などが書かれた箇所を探して、そこを通常は読み込んで調べるはずです。

 

ところが、入試問題においては、問題文全体で伝えようとするメッセージに絡んだ設問が、基本的に必ず出てくるわけで、文章全体をろくに読まずに感覚で解いてしまうような子どもたちがいかに多いか。

ある意味、そういう読み方をしてしまう子たちを振るい落とすために、文章量が増えてきていると言っても過言ではありません。短い文章であれば丁寧に論旨を追いかけながら読み込むと思いますが、それを素早くやって超長文にも対処できるようにすることを本来は目指さないといけない。論旨を正しく追って理解できる状態であるのは言わずもがなです。

 

傍線箇所だけを飛ばし飛ばしで読んでいく読み方よりも、もっと危ういと私が感じる読み方が「AI読み」です。

誤解している人も少なくないと思いますが、AIには読解力はありません。AIは意味を考えるということができないからです。

 

では、AIはどうして問題に答えたりできるのでしょう?

言葉の意味が分からないAIは、文章中に出現する言葉の頻度や順番の統計を出すことができます。こういう言葉が並ぶ文に対しては、こういう言葉や表現を並べればいいというデータベースから回答文を引っ張ってくる。これが読解力のないAIが読解を必要とする問題に対して行う、必死の回答方法です。

そして、同じような読み方をしてしまう子どもたちが最近いかに多いかというのが、ここで私が伝えたいメッセージ。

 

内容を到底読んで理解できない量の文章を目の前にして、読まずに目につくキーワードを寄せ集め、きっとこんな内容が書いてあろうと推測しながら「目を先に進めていく」。

この読み方だと、それなりにスピードが出ます。設問に対しても、人によってはそれなりの正答率が出たりもします、さすがに全問正解とはいかないでしょうが。そのために、自分は速く読める!などと誤解してしまう、誤って自信をつけてしまうようなことも起きてきます。実際は、本来身につけるべき読解力、論理的思考力、表現力が全く身についていないにも関わらず、です。

 

入試において、相当な文章量をこなさないといけないのは事実です。でも、それができていない時には、コツコツと「国語力」を鍛えていくべきであって、何とか時間内に回答していくための対処療法としての「AI読み」で対処するというのは、正直理想的な状態ではありません。

「AI読み」も必要に応じて使えるようにしておくのも社会では必要なことでしょう。ですが、AIに勝る「AI読み」は人には不可能。AIには真似できない本来の読解力、国語力をしっかりと伸ばしてあげることをぜひ考えてあげてください。

読解力のトレーニング